インプレッション(ノーマル)
以前990DUKE(2005式)を乗ってた時はそのインジェクションセッティングのダメさ加減に失望したもんですが、8年の時を経て最新のKTMはどう進化したのか?ネットで見る限りは概ね評判は良いみたい。実際690DUKEに乗ってみると確かに燃調について不満らしい物は感じられず国産バイクの様な安定感があります。古い型のDUKEも乗った事がありますが、それらに比べてエンジンが軽く回るようになった感じ。新型LC4エンジンは良いねぇ〜 4気筒マシンならシフトダウンが必要なところをDUKEは走れる回転数なら何処からでも強力なトルクを発生するもんだから楽し過ぎです。
足回りについては、KTMのロードモデルの悪い癖と言うか何を考えてこんなに前下がりに設定するのか意味が分かりません。激しく切れ込むしバンク角と舵角が一致せずスムーズに走るなんて無理。自分でジオメトリを変更できない初心者ではDUKEの良さを感じる事ができず気の毒な事になっているかもしれません。ちなみに、ネットで見つけた2012年モデルと2013年モデルの写真を比べると、何故か2013年モデルの方がフロントフォークが1cm以上縮んでいるのでセッティングが違うのかも知れません。
燃費はツーリングで最大27km/Lくらい高速道路は23km/L前後、峠の全開走りで15km/Lって感じで財布にやさしい。
4速5速間のギア抜けが酷すぎる。最初4と5の間にニュートラルでもあるのかと疑うほどに抜けまくり 初回のオイル交換後ほんの少し改善、その後少しづつマシになってるけど4000キロ走行の現在も頻繁に抜けるので油断ならない(6500km走行、いくらかマシになりました)、主にアップで抜けるが稀にダウンでも抜ける ダウンで抜けるとかなり慌てる。そういえば990でもギア抜けが酷かった記憶がある。
初心者向きか?と問われると答えはNOです。足回りセッティングができる、もしくはセッティング済みならYES。キッチリとセッティングが済めば誰でも乗りやすくて走るだけで楽しいバイクです。あと、何処が壊れるか把握と対処できる知識も無いと苦労します。4気筒には飽きた、速いだけのバイクはつまらないと感じ始めた人には是非乗ってもらいたい。

峠マシンとして(ノーマル時)
150kgの車体に70馬力、圧倒的に峠で有利! そんなふうに考えていた時期が自分にもありました・・・
実際のところ70馬力と言えど最新SSの加速に比べれば可愛らしいものだし、軸間距離もツアラー並に長く思った程クイックな動きはできません。高いシートと低いステップのせいでS字の切り返しは重ったるいです。パワーでは最高速度が低いタイトセクションなら有利に走れますが、とにかく伸びが無いので速度レンジが上がるほど不利になってきます。
足回り、特にフロントはソフトで動き過ぎな感じで、レートは低過ぎダンパーも弱いのでブレーキングから旋回など動作の間にサスが落ち着くまでの待ちが発生するし、旋回中にうっかりスロットルを戻す動作が入るとグリップが抜けやすく感じます。扱い易さと分かり易さは有りますがイザ攻めるとソフトな足がデメリットと言えるかもしれません。正直なところツーリングスペック・・・ 速く走ろうと思ったらソフトな足回りを無駄に動かさないように丁寧な操作が必要でしょう。初期設定が悪過ぎて軽量な車体なのにコーナー突っ込みと旋回に有利さを感じられないのは残念無念。セッティングもシビアでかなりピンポイントに合わせる必要が有りますが、ノーマルサスのプリロードは1クリックの変化が大き過ぎて微調整ができないのが致命的
スリッパークラッチは非常に作動性が良くスムーズにバックトルクを逃がしてくれます。下手にスロットルを煽らず、普通にクラッチリリースした方がロス無く走れます。APTCスリッパーの効果で正トルクが掛かるとプレートを押し付ける力が働きクラッチレバーは大変軽くなっています。そのかわりトルクが掛かり始めると、やや急激に繋がるため慣れないとエンストしやすいかもしれません。あと、変なジャダーも出ます。
OEMタイヤで装備されてるパイロットパワーは正直そんなに強力なグリップとは感じられません。問題なのがリアのタイヤサイズで、簡単に端まで使い切ってしまうし、バンクを深めてスロットルを少しでもラフに開けると滑り始めます。160/60R17の適正ホイール幅は4.5インチとなっていますがDUKEは5インチありますのでどうしても平べったいタイヤ形状になってしまいます。このホイール幅が性能を落としてると思います。ピレリやメッツラーのようにトレッドがサイドまで回り込んでいるタイヤの方がマッチしますのでそちらに変更するかピレリ以外では180/55への変更が効果的。とにか速く走るにはタイヤチョイスを含め的確なセッティングができる技術が不可欠です。

ツーリングや街乗りなど
速度が出ている時の4000回転以下は振動が無く単気筒とは思えないほどスムーズに走れます。しかし速度(負荷)が低いとスロットルを開けた分より前に進んでしまう感じでギクシャクするってのが大方の感想になると思います。同社のEXCエンジンほどではありませんがレース用エンジンに近く、軽量な回転系で良好(過激)なレスポンスを得るため安定性が犠牲になっているうえに低回転で過剰なトルクが発生しています。要するに低速で一定の回転数をピタリと維持するのが苦手なエンジンです。使う回転数を変えてみたりインジェクションのセッティングを変えても差ほどの改善はできないでしょう。 軽快で峠道が楽しいバイクですが一般道の遅い流れの中では大変不快です。マップ変更スイッチをソフトにすればある程度緩和されますがそれでもやっぱりギクシャクはします。速度が50km/h以下は加速してないと苦痛、60km/h〜110km/h辺りは快適、それ以上は風圧で苦痛、30km/h以下の巡航は考えたくもない。この特性はフリクションが少ないほど顕著になりますので抵抗の少ないチェーンに換えたり高級オイルを入れたり、軽量化をすればするほど酷くなります。逆に上り坂や重い荷物を積むとギクシャクしなくなりますのでツーリングには極力荷物満載が良いでしょう(゜w゜) ギクシャクを減らしたいなら意外にもハイカムの導入が一番効果的、低速トルクが減りギクシャク感が2/3くらいになります。
ポジションは腕を突き出して大きく開くので長時間は大変苦痛になります ハンドルの交換は必須です。シートはフィット感抜群で尻が痛くなる事はあまりありませんがエルゴシートに交換すれば更にソフトで、膝の曲がりも減るので長時間の走行に向きます。足回りは良くも悪くもソフトで、ツーリング向きにできています。DUKE_Rの足回りもバネレートは高いものの、ストローク初期からスムーズに動くためダンパーセッティングをソフトにすれば無印よりも乗り心地が良くなります。
ハンドルを低い物に交換後ツーリングをしましたが思った以上に快適で、一日に400km(高速なし)くらいは楽々です。高速道路を使ったツーリングでは一日に1000km移動しましたが次の日ちゃんと仕事に出られましたw  スリッパークラッチの二次的効果でクラッチが極端に軽いのも長時間ライディングには有利です。高速道路は適度に負荷が掛かってるので回転は大変滑らかでギクシャク感は皆無になり快適です。回転数を4500以下にキープできれば振動が少なく疲労がずいぶん少なくなりますが100km/h以下ぐらいが限界。スプロケは高速道路を使うとしてもフロント1Tまたはリア2Tほどローギア化するのが万能でオススメです。 風圧が掛かるので100km/h以上を維持するのは疲れます メーターに顎が付くほど伏せると風を防げますが姿勢が辛いのでメリットがありません。捕まる程のスピードを出さなくても体が納得するので精神的には楽で良いです。独特のタンク形状で下半身のウインドプロテクションが高く、フィットするシートと相まって夏は尻が暑いです。
低速で多少ギクシャクするのを我慢でき、高速道路は法廷速度をしっかり守るなら、燃費も良く車体が軽い分タイヤの減りも少ないしツーリングマシンとして楽しく優秀なバイクです。

ブレーキ&ABS(解除機能あり)
ABSは攻めの走りには邪魔、ポンピングの間隔も荒く「ガッ、ガッ、ガッ・・・」と数えられそうな速度です。作動すると突然ブレーキを勝手に解除された感じになり危険。効かないだけならまだしも作動中はペダルを押し戻してくるのでコントロールもままなりません。これが少しエンブレを効かせるだけで簡単に作動を始めてしまい大迷惑。モタード的なテールスライドをさせようと思ったら当然ABSはオフにしないと無理。ABSをスポーツ走行に利用しようという幻想は捨てましょう。パニック時のロックには確かにコントロール性を発揮してくれますが、ABS作動時は半端に踏むとペダルに押し戻されるので力一杯踏み付けるのが良いかもしれません。どっちにせよ制動距離はロックさせたより長くなるのでかなり危険です。よくメーカーが「制動距離が短くなる」と謳ってますが、よほどの初心者を対象にしているとしか思えません。ただし、上記は無印DUKEの話で、DUKE_RのABSユニットは2万円以上高価な物が付いていますのでもしかすると違う動きを見せるかもしれません。
無印DUKEの横置きブレーキマスターは攻めの走りには完全に制動力不足、ブレーキに握力が要るのでスロットルワークに集中できません。ただし街乗り程度なら全く問題なく普通に乗れるレベルではあります。パッドをZCOOなどの高性能な物に変えるのが効果的。Rのラジアルマスターに換えるのも良いですが安くは無いので可変レートタイプの社外品をチョイスするのも一考かと思います。

マップ切り替えスイッチ
タンデムシート下に配置してあるスイッチを使ってスロットルマップを3段階に切り替えることが可能。燃調や点火タイミングなどは3段階とも変化はしていないとの話ですが、実際に走り比べるとその違いの大きさに驚きます。資料が無く推測でしかないのですが、スロットルバルブの開閉スピードを変えてるのは間違いないとして、あとはスロットルポジション毎のバルブ開度を変えたり最大開度の位置を変えてると思われます。 スタンダードモードは適度にレスポンスが良くあらゆるシーンを無難にこなせます。ソフトモードはスロットルを素早く操作してもバルブの開くスピードは遅くぼかされ、ギクシャクし難く長距離ツーリングなどでかなり疲れを軽減でき、単に移動手段として考えるなら最も優秀です。不要な開け過ぎも防止してくれるので燃費も良くなるはず。ただし、スローなレスポンスなのでタイトコーナーが連続する道ではタイミングが取り難くなります。アドバンスドモードは最もハイレスポンスでパワーを感じることができますが、極低開度での扱いがシビア、全閉からの開け始めが僅かな無反応後から唐突にレスポンスを開始します。このせいでコーナー立ち上がりをスムーズスロットルオンへと繋げるのが難しいし、負荷の少ない低速では常に意に反し開け過ぎになってギクシャクしてしまいます。何人かに試してもらいましたが、アドバンスドモードは過敏だと大変不評でした。それなりに腕があれば乗り難くてもタイムは出ちゃうほどレスポンス&ハイスロなので使い方次第と言った所。「俺は今、超本気だぜ!」って時に使いましょう。 ちなみにワタシは攻めの走りでもスタンダードモードで走り、長距離で疲労が予測される時や燃費を稼ぐ時だけソフトモードにしています。
ウイリー
軸間距離が長く、高回転の伸びが無いので思ったより上げ難いですが、慣れれば簡単にウイリー可能。低い回転で早めに上げるのがコツ。オフロード車的にサスを使って低速で上げるのが基本なので長距離続けるのはテクが必要。何故か左に傾きやすくてムズい。ノーマルスプロケなら1速で上げて2、3と上げていく感じ。前1T後2Tローにして、2速で上げて3に繋ぐ。フルエキにすると更に簡単に上がるよ。 ハイカム導入車は1速または2速で全開にすればほっといても上がります。 
20000km、タイヤ10セットを乗っての総評
ベストな性能を発揮するのに二年の月日と大変な労力を費やしてしまいました・・・ まぁ趣味なので許せます。
サスのセッティング、特にプリロードと突き出しの許容範囲が非常に狭く細かい設定が必要で、無印のリアショックでは
到底セッティングは不可能、満足できるセッティングにはできないと言うのがここ二年で得られた答えでした。
タイヤは色々試した結果、ピレリのロッソ2などの160/60がベスト!変な切れ込みが綺麗に消えて思った通りの
ラインを走れるようになりました。OEMのパイロットスポーツでは到底ムリなハンドリングです。
消耗パーツと故障に付いては予測できる範囲の物が殆どで、それを守れば大きいトラブルはほぼ回避可能ですが
マニュアルに無い消耗パーツが重大な故障をもたらすので知っておかないと大変な事になります。特にウォーターポンプシールの
交換を怠っていたのは痛恨のミスでした。しかし定期的に交換してもシャフトの磨耗は避けられないので、その時は腰下からの
フルオーバーホールが必要になるでしょう。(シャフトにスリーブを被せる技もあるようです)
DUKEに乗って二年は本当に色々と勉強させてもらいました。セッティングやメンテナンス、手間は掛かるけど
どれもなんとか自分でできてしまう整備性のお陰かも。




・ 性能と引き換えのギクシャク感を納得できる
・ サスセッティングを理解して自分で変更できる
・ 異常を即座に察知し故障の原因を自分で判断できるスキルがある
上記をクリアできる勇者は、他では味わえない凶暴な走りを楽しめるでしょう。

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